《「く × CFCL」アーティスト》

桑田卓郎(クワタタクロウ)

1981年広島県生まれ。
京都嵯峨芸術大学短期大学部、多治見市陶磁器意匠研究所を修了し、現在は岐阜県多治見市を拠点にする。 茶の湯における“侘び寂び”の新解釈を試み、伝統的な茶碗に見られる梅花皮(かいらぎ)や石爆(いしはぜ)といった技法を独自 の表現として追求してきた。
受賞歴は LOEWE Craft Prize の特別賞(2018年)や日本陶磁協会賞(2021年)など。欧米の現代美術ギャラリーに加え、ロンドンのヘイワードギャラリー(2022年)ほか世界各地の美術館で展覧会を開催。作品はルベル・コレクション、パームスプリングス美術館、金沢21世紀美術館、ミシガン大学美術館、シカゴ美術館などのパブリックコレクションに収蔵されている。


桑田卓郎コメント
活動拠点である岐阜県多治見市は美濃焼の産地のひとつとして有名で、古くから伝統芸術と産業の焼き物が共存してきましたが、産業拠点としては安価な海外生産品が多くなるなかで、価格競争から廃業する会社も増えました。この地域には大量生産を支える多種類の原量が集まり、また長い歴史の中で培った多くの生産技術を蓄積しています。その生産方法の一つに機械生産があり、手仕事とはまた違う素晴らしい技術ですが、一部ではこの機械生産技術も途絶える傾向にあります。
その技術を今までのように安価な大量生産に用いるのではなく、多くの行程を経るなかで、手仕事では表現できない精度をいかしたデザインを考え、さまざまな地域の方々に協力して頂き関わり合いながら、新しいプロジェクトとして発展させていきたいのが今回から立ち上げた「く」のプロジェクトです。

アーティストとして発表している作品は日常生活からは少し離れていますが、「く」は毎日使っていただくための器として開発してきました。新しいクラフトの形を提案したいという願いもあり、CFCLのコンセプトともリンクすると感じました。カップを包む、茶道具でいう仕覆(しふく)のようなバッグができたとき、いいなと思うと同時に見たことがないものだからか、すぐに理解できない面白さがありました。

普段からアートとクラフトを行き来しながら制作していますが、器に向き合うと姿勢を正される感じがしています。器は自分の制作の原点です。新しい印象の器かもしれませんが、一歩踏み出して生活に取り入れてもらえたらと思っています。


CFCL高橋悠介コメント
桑田卓郎さんの作品は、学生時代に初めて購入したアート作品です。CFCLがKnit-wareという、ある種の器をコンセプトに衣服をつくるなかで、陶芸とのコラボレーションは興味があるテーマでした。アイコニックなPOTTERY(陶器)のシリーズとも重なるとともに、桑田さんの作品のポップな配色は衣服としても魅力的で、一緒に新しいものを作りたいと思いました。

同時に、桑田さんが手掛ける「く」のクラフトラインが目指すことにも共感しています。クリエイションによって日本の産業を盛り上げ、さらには世界に向けて発信していく姿勢に親和性があると感じました。鑑賞するための陶器ではなく、使えるものとしての器というのも、CFCLの衣服に通じています。

アーティストとのコラボレーションではありますが、作品の一部を衣服に乗せるのではなく、新しい視点としてカップを包むための茶道具にインスピレーションを受けたバッグを作りました。衣服ではなく陶器を包むためのニットによる表現に、領域を横断する印象を受けています。


《桑田卓郎氏キュレーション / 陶芸作家》


加藤委(カトウツブサ)

1962年岐阜県多治見市生まれ
1979年多治見市陶磁器意匠研究所修了
1986年尼ヶ根古窯発掘調査参加
2002年岐阜県現代陶芸美術館「現代陶芸の百年」
2003年茨城県陶磁美術館「白磁・⻘磁の世界」
2013年日本陶磁協会賞受賞円空大賞受賞・作家コメント

作家コメント
今回出展するのは、磁気土の性質を活かした造形の作品。陶芸をするなかで、土と向き合いながら、自分自身を見ています。
桑田卓郎推薦コメント
加藤さんは、作家自身がその時々で土に向き合って表現する、ライブ感のようなものがあります。その造形的な器には青白磁の釉薬が施され美しい水辺のようにも見えます。多治見市の出身で、僕は加藤さんからこの土地の歴史を教えていただき、過去を踏まえて今何をするかという姿勢を学びました。


川端健太郎(カワバタケンタロウ)

1976年埼玉県生まれ
1998年東京デザイナー学院陶器科卒業
2000年多治見市陶磁器意匠研究所卒業

作家コメント
磁器に散りばめられたガラスが作るグラデーションを自然光で見たいと思いました。僕にとってはちょうど良い器型の作品です。
自分は言葉があまりうまくありませんが、作品を制作することがコミュニケーションを補ってきてくれました。作品が他者と色々な関わりをつくる発端となってくれるので、まだまだたまたまに転がっていくことができるな、と思っています。
桑田卓郎推薦コメント
人柄からそうなのですが、陶芸だけに限らず、全てにおいて何かと対話する、向き合う空気感が川端さんの好きなところです。それが作品にも反映されています。普段はオブジェも作られていますが、そのなかで今回は器を出品して頂きました。その器からその空気感を感じてもらえたらと思っております。


田中陽子(タナカヨウコ)

神奈川県生まれ、現在は岐阜県土岐市にて制作。
2007年多摩美術大学美術学部環境デザイン学科卒業
2008年瑞浪市陶磁器メーカー勤務
2011年多治見市陶磁器意匠研究所セラミックスラボコース修了
2014年国際陶磁器展美濃 坂﨑重雄セラミックス賞
2019年茨城県陶芸美術館「第25回日本陶芸展」毎日新聞社賞

作家コメント
日常で普段から使うこと自体クラフトと思っており「こんなシーンに使ったら楽しそう」と思う作品を展示しています。新しい価値観を生みたいと思いながら制作をしています。
桑田卓郎推薦コメント
男だから女だからというのは時代錯誤ではありますが、田中さんの作品は女性の力強さを感じ表現者という言葉が似合う作家です。その作品はデザインしようと思って作られた訳ではなく、素材や制作プロセスの試行錯誤のなかで生まれてきていて、そこにその人の人間性も含まれて、器という形が出来上がっていると思います。


林友加(ハヤシユカ)

1971年兵庫県生まれ
1994年関⻄大学経済学部卒業
1998年土岐市立陶磁器試験場修了
1999年世界工芸コンペティション金沢
2004年「朝日現代クラフト展」
2005年「国際陶磁器展美濃」美濃陶芸永年保存作品として白磁が岐阜県陶磁資料館に収蔵される
2006年工芸都市高岡クラフトコンペ
2008年「織部の心作陶展」
2012年「現代茶陶展」優秀賞
2016年「萩大賞展IV」優秀賞
2019年「現代茶陶展」
2019年「萩大賞展V」優秀賞
2021年美濃陶芸永年保存作品として、志野茶碗がとうしん美濃陶芸美術館に収蔵される
2022年「日本伝統工芸展」
2023年「萩大賞展VI」審査員特別賞


作家コメント
美濃焼の伝統的な釉薬のひとつである、桃山の志野に憧れ陶芸を始めました。今回の作品も志野の技法を用いています。現代の暮らしに寄り添う志野を提案したいと思っています。見て使って、心地良さを感じて頂けたら嬉しいです。
桑田卓郎推薦コメント
林さんはいろいろな様式の作品を作られますが、今回出展されるシリーズは志野という伝統釉を用いた作品です。桃山時代からある伝統釉を継承しつつ時代を超えて現代の器の様式に変わっています。人々の生活の中に取り入れてもらいたいと強く感じるものを作っている作家です。


村上雄一(ムラカミユウイチ)

1982年東京生まれ
2001年沖縄県読谷村の山田真萬工房にて5年勤務
2009年多治見市陶磁器意匠研究所修了
2011年岐阜県土岐市に工房を構える

作家コメント
2つのコンセプトの作品を出展します。ひとつは、沖縄の言葉で「碗」を意味する「マカイ」。沖縄での修行を経て、自分なりに解釈し直したマカイは、ずっと作り続けたい定番のどんぶりです。
編み込みの器は、西洋のアンティークのメッシュプレートから着想を得た、高温で焼くなめらかな白磁です。BGMのような、シンプルな器が好きです。陶磁器の歴史の根幹を捉えて、素材に耳を傾けて制作したいと思っています。
桑田卓郎推薦コメント
村上さんは東京から沖縄まで歩いて旅をし、沖縄で陶芸と出会い、今は美濃焼の町に工房をかまえています。自分で見たこと、経験したことを真摯に器を通じて表現し、産地を背負う姿勢も尊敬しています。いろいろな焼き物を勉強されていて、その上で自分の好きな様式から表現しています。