CFCLは2020年に設立し、衣服の製作や企業活動を通して、様々なステークホルダー全体の利益に資する、お客様、社員、地球環境、取引先を含めた地域社会と連帯することを、事業の根幹においています。衣服の品質や機能性の追求とともに、ビジネスのあり方、働き方、素材やエネルギーのあり方を、サプライチェーン全体で追求しています。
2021年1月に発表したVOL.1コレクションで、メインアイテムのPOTTERY DRESSを通して行った活動と結果は、以下の3点です。
1. 気候危機という世界共通の課題において、私たちがもたらす環境負荷を把握するために、日本のファッション・アパレル業界で初となる「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の実施。
2. 負荷を低減していく上で重要となる素材選定活動の結果として、地球環境や基本的人権への責任が認証された素材の「使用率」を算出。
3. シーズンアイテムの残り糸を用いてアップサイクルした、限定アイテムの生産と販売。
「カーボンニュートラル」という言葉を、耳にする機会が増えたと思います。
日本語では「炭素中立」とも訳されますが、温暖化の原因とされる、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出を、全体として実質ゼロにする取り組みです。ものづくりの過程において使われる素材や、設備を稼働させるためのエネルギー、出張時の移動で使用する車や飛行機など、全ての仕事を温室効果ガスが発生しない太陽光発電などの再生可能エネルギーでまかなうことは現状では不可能です。そのため、再生素材を多用したり、植林活動をして二酸化炭素の吸収を促進したりして、発生させた温室効果ガスと、(理論的には)吸収させた温室効果ガスを「均衡」して、その合計を「実質」ゼロにすることを意味しています。世界の主要各国や先進企業がすでに先行しているテーマですが、日本政府も2050年までに、このカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。
そこで、VOL.1のローンチにあたり、日本のファッション・アパレル業界では初となるLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しました。
LCAとは、製品が生まれてからその役目を終えるまで(衣服の原料調達、糸の生産、染め、最終加工、販売、着用、廃棄まで)、どれだけの温室効果ガスを発生させているかを、国際規格(ISO140140など)に基づき算出・数値化し、「可視化」する手法です。(*1) カーボンニュートラルが目指す脱炭素社会や、循環型社会の実現に向けて、欠かせない一歩となります。
POTTERY DRESS(short sleeve) 4.99kg-CO2e/1着
VOL.1で登場したPOTTERY DRESS 1着(重さ約540g)あたりの「温室効果ガス排出量」です。温室効果ガスにも様々な種類がありますが、それら全てを二酸化炭素に換算した数値として表現するため、「CO2e」という単位を使います。ドレスの糸をつくる過程から、お客様に長年愛用されて廃棄されるまでに、上記の二酸化炭素量を排出していることがわかります。(*2)
POTTERY DRESSには、廃棄されるはずだった約18本分のペットボトルが再利用されています。ペットボトル由来の再生糸を使用すると、石油由来のポリエステル糸で生産した場合に比べ、およそ約50%程度の温室効果ガスが削減されると言われます(*3)。また現在、多くのファッション衣料は、中国や東南アジアで大半が生産されますが、POTTERY DRESSは日本国内でほとんどの工程を終えるため、輸送の面からも温室効果ガスの排出を抑制しています。
CFCLはこの排出量を、日本政府が目指す2050年より20年早い、2030年までに実質ゼロ(カーボンニュートラルの状態)にすることを目指して、今後ライフサイクルに関わるすべてのサプライヤーやパートナー各社の協力のもと、素材の選定をはじめ、様々な取り組みをしていきます。
*1:IDEAv2.3を使用して算定 (LCIデータベースIDEA version2.3, 国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門社会とLCA研究グループ, 一般社団法人サステナブル経営推進機構)
*2:参考として、従来のコットンで生産したTシャツ1枚(150g)で、3.4kg-CO2eの温室効果ガスを排出している、という研究結果がある。(「衣類を対象にしたCO2及び水のインベントリ分析」東京都市大学 環境情報学部 環境情報学科 伊坪徳宏研究室 )
*3:自社調べ。
上記の数値は、VOL.1コレクションの量産時に地球環境への負荷を抑え、人権保護の観点でも健全性が保証された糸の使用率です。私たちが信頼するこの認証制度は、「グローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)(*1)」というもので、国際的な基準を満たした素材がどのくらい使われているのかを、別注商品を含む全ての商品から算出(*2)しています。
市場には「再生素材」や「生分解性素材、海洋分解性素材」、「石油の使用を抑えた素材」などが近年登場してきているものの、GRSを取得するような素材や、環境負荷を低減しているとは言えない素材も多く、お客様により長く愛用いただくために使用できる素材は極めて限定的で、選択肢が少ないのが現状です。
VOL.1では全てのアイテムに再生繊維を使用していますが、1着あたりの再生繊維使用率が100%でないものが商品にあるのは、そうした理由が背景にあります。
私たちが目指すのは、現代生活に寄り添いながら、人々が衣服をまとう喜びを感じ、快適な暮らしを共にする皮膚のような存在になることです。そのため、どれだけ環境配慮素材を用いたとしても、この目的が果たされなければ、短期間で廃棄されることにつながり、私たちの考える衣服とは異なるものになってしまいます。
使用率の数値を公表し続け、原料や素材メーカー各社とともにより良い素材を開発しながら、2030年までに全ての商品で、再生素材を中心とした100%環境負荷を低減する衣服の製作を実現します。
*1:GRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)は2008年にControl Union Certificationによって策定され、2011年にTextile Exchangeに譲渡された認証プログラムです。GRSは、リサイクル含有物、加工流通過程管理、社会および環境慣行、化学物質規制の第三者による認証要件を設定する、国際的な製品基準です。VOL.1コレクションで使用した認証素材は、全てGRS認証となります。
*2:今回の集計にボタン、ファスナー、紐、ウェストゴムなどの付属資材は含まれておりません。
壺のような丸みをもつシルエットが特徴的な、POTTERYシリーズのアップサイクルアイテム。
量産時に、色ブレを最小限にするために糸を少し多めに準備しています。その糸の余りを使用して、バイカラーのトップとスカートに仕立てました。通常余った糸は廃棄しますが、焼却処分による温室効果ガスの発生を回避し、価値あるものとして商品化する「アップサイクル」という循環型ビジネスモデルです。オレンジ、カーキ、ライトグレーの糸から2色を引き揃えて編み立てるため、複数の色が混ざり合います。ボリュームのあるシルエットはそのままに、新たな表情へと生まれ変わりました。
コンピュータープログラミングの無縫製ニット技術を採用し、シームレスで肌馴染みがよいアイテムです。素材は従来と同じく再生ポリエステルを100%使用し、ご家庭でのお洗濯が可能です。