VOL.11 REPORT
2026.06.04
CFCLは創業以来「現代生活のための衣服」を提案し続け、衣服としての機能性、環境への配慮、最適な素材の選択、サプライチェーンの透明性を追求するものづくりを行なってきました。
サステナビリティに向けた私たちの長期的な取り組みは、毎シーズン着実に前進しています。2030年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、創業当時より開始したLCA (ライフサイクルアセスメント) 算定は衣服における全品番まで拡大され、算定から具体的な検証のプロセスへと進み始めます。サプライチェーンの透明性の確保に向けた歩みも継続し、国内のニット製造・染色・製糸工場との密な連携に加え、国外を拠点とする原料調達の川上まで調査範囲を広げています。
素材の選択に関しては、VOL.11コレクション (2026年春夏) で表現の幅を広げるため、和紙糸や透明糸、竹由来の新素材を採用した結果、認証素材の使用率が低下しました。私たちはこの事実をクリエイションの進化と環境配慮のあいだで生じたトレードオフとして真摯に受け止めています。
ブランドの根幹である洗練性と倫理性のどちらも妥協することなく課題に向き合うため、今回のレポートでは私たちが直面するありのままの現状と未来に向けた具体的なアクションをご報告します。
VOL.11では、以下3つの領域に焦点を当て、具体的な検証と評価を行いました。
1. 素材の調達
・認証素材の使用率と、生産者の労働環境・環境負荷に配慮した素材選定の検証
2. LCA (ライフサイクルアセスメント)
・VOL.10/VOL.11 製品LCA算定結果の分析
・コットン・イン・コンバージョンを使用した製品の検証結果
・竹由来の糸を使用した製品の検証結果
・紙を使用した製品の検証結果
3. IMPACT
・B Corp再認証:社会インパクトの現在地と歩み
MATERIAL
地球環境および生産者の労働環境への責任の履行が認証された素材の使用比率
図1 VOL.11コレクションで使用された素材の使用比率 *1
*今回の集計では、ボタン・ファスナー・紐・ウエストゴムなどの付属資材については、原材料に占める割合が限定的であるため、対象外としています。
CFCLでは、原料段階から地球環境や基本的人権への責任の履行が第三者機関によって認証された素材の使用を積極的に進めています。一方で、VOL.11 (2026年春夏) においては、昨年同シーズンのVOL.9と比較して認証素材の使用率が2.7%減少しました (図2)。
VOL.11は「Concreteness」をテーマに掲げ、ジャン・アルプが提唱した「具体芸術」に着想を得て、具体の想像を膨らませながら、透明な視野を反映するマテリアルで新しいKnit-wareを表現しました。春夏向けの素材選定においては、軽さ、イージーケア、そして長期化する夏への適応を優先しています。その結果、コレクション全体における衣服のさらなる軽量化や、透明感、構造的な柔軟性を実現するうえで、現時点では非認証素材に該当するヴァージンポリエステルやヴァージンナイロンの使用が拡大しました。
これに伴い、コットン・イン・コンバージョンやオーガニックコットンをはじめとする認証済み天然繊維の採用は増加したものの、これまでクリエイションの中心に据えてきた再生ポリエステルやキュプラといったリサイクル素材の比率は減少しています。また、表現の幅を広げていくなかで、一部の製品にはバンブーレーヨンや紙素材といった非認証素材も使用しています。
認証素材の使用拡大には、依然として調達における実務的な課題が伴います。具体的には、ミニマム発注数量の制限や高額な開発コスト、特殊な糸における供給の限定性などが挙げられます。これらは、私たちが求める高い機能性や洗練された美しさを担保しながら、より技術的で複雑なデザインを開発する際の選択肢を狭める要因となっています。そのため、現段階ですべてのクリエイションを認証素材のみで完結させることは、必ずしも現実的ではないのが実情です。
VOL.11を象徴する素材の一例として、コレクションの鍵となる軽量で透明感を実現するために採用した、特定の透明モノフィラメント糸が挙げられます。本コレクションでは、全品番のうち19%にこの素材を使用しました。リサイクル糸の選択肢も存在しますが、供給の制限や、私たちが求める構造的な品質を維持するという観点から採用は見送り、ヴァージン素材を選択しています。
こうした判断には、CFCLが求めるデザイン性と生産の要件を高い水準で両立させながら認証素材を統合することの、現実的な難しさが反映されています。同時に、CFCLは2030年までに認証素材使用率100%を達成するという目標に向けて、サプライチェーンや製造パートナーとの継続的な連携をより一層深めています。クリエイションの洗練性とトレーサビリティを損なうことなく、認証素材の選択肢と適応性を広げるため、今後も素材調達における課題解決へと着実に取り組みます。
図2 春夏シーズンにおける認証素材の使用割合
LCA
VOL.10/VOL.11 LCA算定結果の分析
VOL.10に続き、VOL.11においても全品番の温暖化ガス排出量算定を実施しました。一年を通じた服づくりの工程で生じる温暖化ガス排出量の実態を可視化し、課題の整理と今後の取り組みについてご報告します。
*算定範囲は、原料調達から素材加工・製品製造・保管・使用・廃棄までのライフサイクル全体。サプライヤーと連携して収集したデータをもとに、直接収集が困難な工程については公開されている環境データベースを活用して補完しており、精度向上に向けた取り組みを継続しています。
Ⅰ. 2シーズンの排出量概要
図3 VOL.10/VOL.11の温暖化ガス総排出量

グラフ (図3) の通り、VOL.10 (2025年秋冬) の総排出量は281,839kg-CO2e、VOL.11 (2026年春夏) は241,161kg-CO2eと、VOL.10がVOL.11を約17%上回っています。この差の最大の要因は動物繊維の採用です。製品一着あたりの平均で比較しても、VOL.10は11.7 kg -CO2e/1pc、VOL.11は7.4kg-CO2e/1pcとなり、秋冬と春夏シーズンでの素材構成が排出量に影響していると考えられます (図4)。
図4 製品一着あたりの排出量 (kg-CO2e/1pc)

分布の観点では、環境省の調査に基づくアパレル業界平均 (25.5kg-CO2e/1pc) *2 を超える製品の割合は、VOL.10で6.1%、VOL.11では0.4%にとどまっています (図5)。CFCLの製品の大部分が業界平均を下回っており、相対的に低い排出水準を実現しています。これは、再生素材を主な原料として使用していることに加え、生産工程が布帛に比べて少ないニットに特化した服づくりによるものです。
図5 製品一着あたりの排出量分布

Ⅱ. 素材インパクト
素材の選定は、製品一着あたりの排出量を左右する最大の要因です。2シーズンのLCAデータから、秋冬における動物繊維、春夏におけるヴァージン化学繊維が、それぞれ排出量を押し上げる主因であることが明らかになりました。
1. VOL.10 — 動物繊維
秋冬は季節性からカシミヤやモヘア、ウールといった動物繊維の採用が多くなりますが、LCAデータは、これらの素材が製品一着あたりの排出量を大きく押し上げる主因であることを示しています。VOL.10では動物繊維の使用率が全体の5.8%に対し、温暖化ガス排出量の比率は35.5%と、使用量の約6倍に相当します (図6)。
図6 動物繊維の使用率と温暖化ガス排出量比率の比較

モヘアの製品に着目すると、MOHAIR CARDIGAN (93.05kg-CO2e/1pc)、MOHAIR PULLOVER (92.49kg-CO2e/1pc) と、90kg-CO2e/1pcを超える数値が並びます。モヘアは原料調達段階 (山羊の飼育過程) におけるメタンガスの発生や放牧地管理に伴う環境負荷が積み上がる構造にあります。カシミヤも同様で、CASHMERE HOODIE TOP (89.97kg-CO2e/1pc) がこれに続きます。これらの数値は、素材の選定が企業全体の排出水準を大きく左右することを示しています (図7)。
図7 動物繊維を使用した製品の温暖化ガス排出量

実際、モヘアカーディガンと同じ重量 (約0.66kg) の再生ポリエステルのPOTTERY SHORT BELL SLEEVE FLARE DRESS (7.51kg-CO2e/1pc) と比較すると、重量が同じであっても素材の種類が異なるだけで、排出量は約12倍の差が生じます (図8)。
図8 同じ重量 (約0.66kg) の製品間における温暖化ガス排出量比較

*素材由来の排出量の差を示す参考値であり、製品用途や機能性を揃えた比較ではありません。
2. VOL.11 — ヴァージン化学繊維
動物繊維を使用しない春夏の全体平均排出量は秋冬を下回りますが、LCAデータからは、ヴァージン化学繊維が製品一着あたりの排出量を押し上げる要因であることが読み取れます。VOL.11ではヴァージン化学繊維使用率が全体の7.5%に対し、温暖化ガス排出量比率は13.7%と使用量の約1.8倍となりました (図9)。
図9 ヴァージン化学繊維の使用率と温暖化ガス排出量比率の比較

例えば、ヴァージンナイロンとヴァージンポリエステル糸を使用したFLUFFY CAMISOLE LONG DRESSは20.29 kg-CO2e/1pcと、VOL.11では排出量がもっとも多い品番の一つです。この素材が持つ透明感やメタリックな質感はCFCLのデザインにおいて重要な要素ですが、現在は排出量が少ない再生素材では表現できません (図10)。
図10 ヴァージンナイロンとヴァージンポリエステル糸を使用した製品の温暖化ガス排出量

2030年のカーボンニュートラル実現に向けて、シーズンを問わず素材の選定に温暖化ガス排出量削減の視点を入れていく必要があります。特に秋冬の動物繊維は排出量への影響が大きく、優先的に取り組むべき領域です。CFCLのデザイン性や機能性、品格に適合する代替素材の検討と、デザインの表現を損なわない範囲での動物繊維使用量の見直しを進めていきます。春夏のヴァージン化学繊維についても、意匠性を維持しながらリサイクル率を高めた「低炭素な意匠糸」の共同開発の可能性を、素材メーカーと連携しながら模索していきます。
Ⅲ. エネルギーインパクト
衣服の製造には、原料の加工から製品の縫製・編み立てまで、熱や電気などのエネルギーを多く必要とします。CFCLの製品においては、そのなかでも電気使用に由来する排出量が高い傾向にあります。工程別に見ると、糸製造 (原料調達/素材加工) とニッティング (商品製造) の2工程が排出量において特に大きな割合を占めています (図11)。糸製造工程のうち電力使用に起因する排出量は、VOL.10で19,682kg-CO2e、VOL.11で20,114kg-CO2eに上ります。ニッティング (商品製造) 工程はその性質上ほぼすべてが電力由来であり、VOL.10で73,674kg-CO2e (26%)、VOL.11で76,337kg-CO2e (32%) に達しています。これらはいずれも再生可能背ネルギーへの切替によって削減できるポテンシャルがある領域です。
図11 工程別排出量比率

糸製造工程およびニッティング工程で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えた場合、VOL.10で約93,356kg-CO2e、VOL.11で約96,451kg-CO2eの削減が見込まれます。これはそれぞれの総排出量の約33%、約40%に相当し、再生可能エネルギーへの切り替えが排出削減において非常に有効な手段であることを示しています (図12)。
図12 工程別の再生可能エネルギーへの切替によって削減できるポテンシャル内訳

特にニッティング工程は、私たちが直接関与できる製造領域の一つです。現在、自社工場で使用する電力については再生可能エネルギーへの切り替えに向け、電力事業者やビル管理会社との協議を進めています。今後は、自社拠点での実践をもとに、協力工場との対話・連携へと広げていく考えです。
Ⅳ. VOL.11で使用した素材の検証結果
VOL.11では、コレクションの表現を広げるために新たに採用した素材を中心に、個別の検証を実施しました。コットン・イン・コンバージョン、竹由来の糸 (バンブーレーヨン)、和紙糸の3素材について、LCA算定結果とサプライチェーンの透明性の観点からそれぞれ報告します。
1. コットン・イン・コンバージョン (CIC)

CFCLはものづくりの主な素材として再生ポリエステルを使用していますが、とりわけ春夏シーズンにおけるコットンも同様に重要な素材です。近年の記録的な猛暑と長期化する夏という環境変化のなかで、心地よく過ごすためのニットウエア開発は、私たちにとって取り組むべき課題のひとつです。
春夏向けには着心地の良さを追求し、コットンを再生ポリエステルでカバーリングした独自開発の糸を用いています。コットンならではの吸湿性とやさしい肌触り、ポリエステルの特性を活かした型崩れしにくく清涼感を兼ね備えたニットを実現しました。VOL.5で初めてこの開発糸を使用して以来、コットンの使用量はシーズンを追うごとに増加し、VOL.11では再生ポリエステルに次ぐ使用量となっています (図13) 。
図13 シーズンごとのコットン使用量

コットンの使用量が増えるにつれ、私たちはその生産背景のトレーサビリティをより深く見つめるようになりました。その過程で出会ったのが、「コットン・イン・コンバージョン (以下、CIC=オーガニック移行期間中のコットン) 」の存在と、その移行期に潜むさまざまな課題です。
世界の繊維生産において、ポリエステルが過半数を占めるなか、コットンは約19%を占めています (図14)*3。 一方で、オーガニックコットンや移行期間中のコットンの割合は綿花全体の2.9%程度にとどまっており、その普及は限定的です*4。
図14 世界の繊維生産量

欧州を中心とした環境規制の強化により、オーガニックコットンの需要が急速に高まっているにもかかわらず、農家にとってオーガニック農法への移行は高い参入障壁を伴います。土壌の健全化には約3年の期間が必要とされ*5、その期間に収穫されたコットンはオーガニック認証を取得できません。さらに、農法転換直後は収量が減少するものの、従来型コットンと同じ価格で販売せざるを得ないことから、農家は収入減という経済的なリスクを単独で負うことになります。こうした構造がオーガニックコットンの普及を妨げる一因となっています。
この課題に取り組むため、CFCLでは、スタイレム瀧定大阪株式会社が推進するオーガニックフィールドの取り組みに賛同し、CICの活用を通じて農地段階からのトレーサビリティ確保と農家支援を後押しするとともに、綿花栽培のオーガニック化を共に推進しています。
コットンのサプライチェーンは、農地での栽培から紡績まで複数の工程を経て糸へと加工されます。各工程では異物の混入 (コンタミネーション) を防ぐための管理が行われていますが、オーガニックコットンと従来型コットンは外観上の判別が難しく、特に農業段階では混在や偽装のリスクが存在します。そのため、各工程での管理に加え、農地を起点としたトレーサビリティの確保が重要です。
2025年12月、私たちは実際にインドの農地や紡績工場を視察しました。コンタミネーション防止に向けた取り組みの現場に立ち会い、農家の住居を訪問して実際の生活水準を確認するなど、CFCLとして今後どのような関わりを持っていけるのかを具体的に考える契機となりました。また、こうした視察で得た学びとCICの背景を直接伝える場として、2026年4月銀座・和光でPOP UPイベントを開催しました。会場ではCIC採用製品の展開に加え、生産工程の映像展示を行い、CFCLの服づくりの背景を多くのお客さまと共有しました。
写真1 コットン・イン・コンバージョンの農地・紡績工場視察風景

左:綿花の収穫風景 右:紡績工場での検査作業
オーガニック農法への転換を後押しすることは農家支援にとどまらず、環境負荷を低減する有力な手段であると考えられています。同じ調達先であるインドのマディヤ・プラデーシュ州のデータによると、オーガニック農法は一般的な農法と比較して、種子綿1トンあたりの温暖化ガス排出量を約50% (680.20kgから338.50kg CO2 eqへ) 削減できる可能性が示されています*6。さらに、水の消費量抑制や土壌への炭素貯留など、その他の環境貢献も期待されます。
今回の算定結果は以下の通りです (図15)。LCA算定には、従来型コットンのLCIデータベース数値*7 を代用しています。
図15 コットン・イン・コンバージョンを使用した製品の温暖化ガス排出量

今後はパートナー企業と協力してより精度の高いデータ収集に努めるとともに、CICの積極的な採用と農家への直接的な支援を通じて、サプライチェーンの透明性向上と持続的な環境負荷の低減を追求していきます。
2. 竹由来の糸 (バンブーレーヨン)

BAMBOO CONICに使われている素材は、肌触りのよさを追求するなかで開発したCFCL独自のものです。竹由来のバンブーレーヨンと再生ポリエステルを組み合わせることで、イージーケアでありながら、シルクのようなスムースな質感と清涼感を実現しています。
竹は、素材として多くの特性を持ちます。成長が早く、一般的な農作物と比べて水の消費量が少ないことに加え、空気質の改善を促し農薬を必要としません。また、天然由来の柔らかさや通気性、吸湿性、無毒性を兼ね備えた繊維を生み出します *8。
一方で、竹を衣服用の繊維として使用するためには科学的な加工工程が必要です。バンブーレーヨンは一般的なビスコース法によって製造されており、竹パルプを繊維に変換する過程で水酸化ナトリウムや二硫化炭素 (CS₂) などの化学物質が使用されます。ビスコースレーヨンの環境への影響はその製造方法に大きく左右されます。適切な処理システムとクローズドループの化学物質回収を導入した近代的な施設では影響を大幅に軽減できますが、こうした取り組みはメーカーごとに異なります (図16)。
図16 ビスコース法によって製造されるバンブーレーヨンの一般的な製造プロセス

CFCLでは、オリジナル素材を開発したサプライヤーを通じてバンブーレーヨンの紡績および原料加工工程の調査を行いました。しかし、機密保持契約に基づき、CS₂回収率や排水処理に関する詳細なデータを含む原料製造段階の個別情報までは把握できませんでした。現時点でトレーサビリティを確認できているのは、中国・浙江省衢州市の紡績工場において完成済みのバンブーレーヨンステープルファイバーを調達する工程以降です。
ただし、紡績メーカーからは「中国国内の環境基準に基づいて操業しており、CS₂回収システム・排ガス処理・排水処理設備を備えている」との説明を受けています。紡績工場で加工されたバンブーレーヨン糸は船便で日本へ輸送され、国内にて再生ポリエステルとの撚糸および染色加工を経て、ニッティング工程へと進みます (図17)。
図17 CFCL独自の竹由来素材のサプライチェーン

また今回の竹由来素材については、FSC/PEFCによる森林管理認証およびOEKO-TEX *9 による有害物質管理認証は取得されていませんでした。サプライチェーン内で確認できた唯一の第三者認証はZJQC (ISO 45001) であり、紡績工場の労働安全衛生管理 (化学物質管理を含む) を対象としたもので原料製造段階には適用されません。十分な透明性を確保できていない現状を真摯に受け止め、今後の素材開発における重要な課題として取り組んでいきます。
今回のLCAの算定結果は以下の通りです (図18)。製品単位での温暖化ガス排出量については、原料調達や輸送に関する情報が限定的であったため、LCA算定には主にデータベース上のLCIデータベースの数値*7 を用いています。
LCA算定の結果、VOL.11のBAMBOO CONIC SLEEVELESS DRESSは17.44kg-CO2e/1pcとなり、VOL.10の再生ポリエステルを使用した同型のCONIC SLEEVELESS DRESS (19.33kg-CO2e/1pc) と比較して1.89kg-CO2e低い結果となりました。この差異には、糸構成や製造条件の違いに加え、BAMBOO CONIC SLEEVELESS DRESSの重量が約200g軽いことと、バンブーレーヨンの排出量が再生ポリエステルと同水準に低いことが寄与しています。
図18 VOL.10とVOL.11のCONIC DRESS比較

素材の選定によって、両品番の風合いやドレープ、全体的な印象に明らかな違いが生まれます。バンブーレーヨンが持つナチュラルな風合いが服づくりに新たなバリエーションをもたらしたことは事実ですが、サプライチェーン全体にわたる透明性の確保は今後も向き合い続けるべき課題です。竹由来の素材に限らず、環境負荷が低いとされるレーヨンやリヨセルなどの代替素材への切り替えも視野に入れながら、より持続可能な素材開発に取り組んでいきます。
3. 紙(和紙糸)

本素材は、春夏のコレクションにおいて継続して展開しているシリーズの一つで、和紙と再生ポリエステルを組み合わせた独自の素材です。一般的に和紙は楮 (こうぞ) や三椏 (みつまた) などの靭皮繊維を原料としますが、本素材の和紙部分はフィリピン原産の針葉樹 (一般的には松など) を原料としています。抄紙 (シート化) した紙を細くスリットし、撚りをかけて糸状に加工したもので、軽量でありながら適度なハリを持つ独特の風合いが特徴です。繊維表面の構造により肌離れが良く、吸水速乾性にも優れており、独特のシャリ感を伴った快適な着心地を生み出します。
今回の算定結果は以下の通りです (図19)。製品単位での温暖化ガス排出量は、他の天然繊維の製品と比較して高い傾向は見られませんでした。糸単位での算定では、染色や撚糸といった加工工程の影響が相対的に大きく、排出量が特定の工程に集中せず複数の工程に分散する構造が特徴です。なお、和紙糸の強度を高めるために組み合わせたポリエステル部分をヴァージン素材から再生素材に置き換えたことも、排出量の削減につながっています。
図19 紙を使用した製品の温暖化ガス排出量

一方で、和紙部分には森林由来原料を使用しているものの、現時点でFSC認証などの森林認証が取得されていません。サプライヤーとの対話を継続しながら、FSC認証取得済み素材への切り替えも視野に入れ、より持続可能な素材開発に向けた取り組みを続けていきます。
IMPACT
CFCLは2026年1月、国際認証「B Corp (Benefit Corporation) 」の再認証において143.5点を獲得しました。これは2022年の初回認証時の128点を上回るスコアであり、日本のB Corp取得企業として最高得点 *10 となります (図20)。
図20 CFCLのB Corp公式プロフィール (スコア公開) ページ*11

CFCLは、創業当初より、B Corpの基準を単なる目標ではなく、組織設計のベースラインとして据えてきました。今回のスコアは、事業成長と並行して私たちが追求してきた「事業を通じた社会貢献の仕組み (インパクト・ビジネスモデル) 」の成果が数字として現れたものです。同時に、次に向き合うべき改善点も明確になりました。初回認証からの推移を含めたCFCLの客観的な現状は以下の通りです(図21)。
図21 B Corp 認証スコア比較

B Corpの審査は、企業活動全体が社会や自然環境にどのような影響を与えているかを測るため、以下の5つの領域に分けて評価されます。
・Environment (地球環境)
事業活動が自然環境(気候変動、資源、廃棄物など)に与える影響
・Community (コミュニティ)
サプライチェーンでの公正な取引や、地域への貢献、多様性
・Workers (従業員)
給与や福利厚生など、働く人々の健康や生活を守る労働環境
・Governance (ガバナンス)
透明性の高い情報開示や、社会のためのルールを定めた経営体制
・Customer (顧客)
顧客情報の保護や、提供する製品・サービスがもたらす価値
今回の再審査では特に「Environment (地球環境) 」と「Workers (従業員) 」の領域でスコアを大きく伸ばしています。以下、領域ごとの取り組みと評価を報告します。
Ⅰ. Environment (地球環境)
全5分野の評価のなかで、最も大きな伸びを見せたのがこの領域です。主要な評価対象期間 (VOL.9コレクション) において、「環境負荷の低減を事業成長の仕組みに組み込んだ」インパクト・ビジネスモデル の成果が明確に現れたことが、スコアを大きく押し上げました。
CFCLが中核とするニットに特化したビジネスモデルは、デザインからプロトタイピング、量産に至る過程で発生する廃棄物が極限まで削減されています。さらに、具体的な数値目標の達成もスコアの向上を後押ししました。VOL.9では、LCA算定の対象がファーストシーズンの1品番から衣服全体の約81%にあたる148品番へと拡大。認証素材の使用率も、再生ポリエステルを中心に全体の91.9%にまで引き上げました。加えて、オフィスでの環境配慮型備品の購買など、日々の細やかな取り組みの積み重ねも着実な評価向上につながっています。
Ⅱ. Community (コミュニティ)
コミュニティ領域では、サプライチェーンでの公正な取引や多様性の推進、地域への寄付やボランティア活動など、企業が関わる地域社会や人々への影響が問われます。
国内を中心とした地域経済への貢献が評価の基盤となりました。CFCLは売上原価の80%以上を国内で調達し、生産工場と長期的な関係を築いています。一方的な価格交渉を行うのではなく、対話を通じて適切な取引条件を決定し、定期的な工場訪問を通じて工場側の利益確保や雇用創出に貢献する体制が評価されました。
一方で、社内外におけるDEI (多様性・公平性・包摂性) の比率や、地域社会への寄付、社員のボランティア活動への参加率については数値として示せる実績がまだ少なく、次期に向けた明確な課題として浮かび上がっています。
Ⅲ. Workers (従業員)
この領域では、給与水準や健康と安全、キャリア形成など、従業員が尊厳を持って働ける環境が整っているかが問われます。B Corpはグローバル基準で審査されるため、日本において広く普及している社会保険制度もセーフティーネットの基盤としてスコアの底上げに寄与しています。
CFCLならではの特徴として高く評価されたのは、法令遵守の枠を超えた労働環境の整備です。特筆すべきは、法律で定められた「最低賃金」を満たすだけでなく、実際の生活コストを反映した「生活賃金 (Living Wage) 」という概念を明示的に採用し、フルタイム従業員の100%にその相当額を支払っている点です。日々のウェルネス (心身の健康) 活動への独自の支援など、企業の成長に合わせた手厚い福利厚生の拡充も評価を牽引しました。
今後は、従業員一人ひとりの業務評価に社会や環境への貢献度をどう組み込んでいくかなど、すべてのメンバーが自社のパーパスを実感できる組織づくりが次なる探求テーマです。
Ⅳ. Governance (ガバナンス)
この領域では、企業の透明性や倫理観、そして「利益だけでなく社会のためになることをする」というミッションが会社のルールとして明確に定められているかが問われます。
CFCLは前回と同水準のスコアを維持しました。すべてのステークホルダーへの配慮を約束する「B Corp契約書」への署名をはじめ、新入社員からマネージャー層に至るまで、社会や環境に関する原則を社内の研修プログラムに組み込み、組織全体で共有している点が評価されています。
今後は会社の成長を見据え、現在実質的に機能しているガバナンス体制を明文化し、より強固な仕組みへと整えていきます。あわせて、日々の活動から生まれる社会的インパクトを客観的に測るための指標づくりを進め、その成果を経営の意思決定プロセスへとさらに統合していくことが次なる課題です。
Ⅴ. Customer (顧客)
この領域は、医療や教育など「社会課題を直接解決するサービス」を主な評価対象としているため、CFCLを含むアパレル製造業においてはシステム上、評価配分の上限が低く設定される特性があります。そのような基準のなかで、今回は製品の厳格な品質管理体制やプライバシーポリシーの遵守、購入後のアンケートを通じたお客様の声の収集、カスタマーサポートの充実といった日々の基本的な取り組みが評価されました。
今後は、こうした基礎的なサポート体制を土台としつつ、衣服をより長く愛用していただくためのリペアや回収システムの拡充に取り組み、環境負荷を減らすための情報共有や対話を深めながら、購入後も続く「長期的な信頼関係」の構築に努めていきます。
次のフェーズへ
今回の再認証におけるスコアの向上は、初回認証からの取り組みの進捗と組織としての成長を確認するひとつのマイルストーンであると同時に、次に向き合うべき課題を明確にするものでした。
2026年以降、B Corpの認証基準は従来の「総合点数制」から、すべての重要分野において高い水準を満たすことが求められる「必須要件制」へと移行します。得意分野でスコアを補い合うのではなく、事業活動のあらゆる側面において一定以上の倫理性が問われることを意味します。この新たな基準を見据え、今回の結果に満足することなく、全社横断的なチーム体制を一層強化し、すべての領域におけるアップデートに継続して取り組んでいきます。
*1 CFCLで使用している認証素材名一覧は以下
・GRS (グローバル・リサイクルド・スタンダード) は2008年にControl Union Certificationによって策定され、2011年にTextile Exchangeに譲渡された認証プログラムです。GRSは、リサイクル含有物、加工流通過程管理、社会および環境慣行、化学物質規制の第三者による認証要件を設定する、国際的な製品基準です。
・GOTS (グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード) は代表的な国際基準策定機関によって、原料の収穫から社会的に責任のある製造を経て、消費者に信頼できる保証を与えるラベリングに到るまで、「繊維製品が正しくオーガニックである」という状況を確保する世界的なルールを定めるために開発された国際的な世界基準です。
・OCS (Organic Content Standard) 認証は、製品に含まれるオーガニック素材の含有量を第三者が検証する国際基準です。原材料から最終製品までのオーガニック素材の追跡可能性を保証し、信頼性を提供します。
・RCS (リサイクル・クレーム・スタンダード) は、最終製品に含まれる原材料に5.0 %以上の再生材料を含んでいるかどうかを審査する国際認証です。
・FSC (森林管理協議会) は、環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林から生産された林産物や、その他のリスクの低い林産物を使用した製品を目に見える形で消費者に届ける仕組みを保証する認証です。
・PEFC™認証 (Programme for the Endorsement of Forest Certification) とは森林資源を持続可能に利用し、環境、社会、経済のバランスを考慮した森林管理を推進する国際的な認証制度です。
*2 環境省サステナブルファッション:こちら
*3 Textile Exchange. Materials Market Report 2025 11P
*4 Textile Exchange. Materials Market Report 2025 22P
*5 IFOAM Basic Standards (IBS), 4.2 Length of Conversion Period 21P
*6 Thinkstep Sustainability Solutions Pvt. Ltd. "Life Cycle Assessment of Cotton Cultivation Systems: Better Cotton, Conventional Cotton and Organic Cotton". C&A Foundation, 2019 41P,50P
*7 LCI (ライフサイクルインベントリ) データベースとは、製品やサービスのライフサイクル全体にわたる環境影響を定量的に評価するためのツールのこと。CFCLでは主に産業技術総合研究所、産業環境管理協会によって共同開発されたIDEAを使用しLCA算定を行っている。
*8 CFDAマテリアルズインデックス:バンブー: こちら
*9 エコテックス(OEKO-TEX): こちら
*10 2026年1月Bcorp取得時点
*11 CFCLのB Corp公式プロフィール (スコア公開) ページ:こちら
WHISTLE BLOWING
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email:komatsu.junya@mktlaw.jp
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