Yusuke Takahashi

タイムレスな肖像

CFCL 高橋悠介

CFCLは「現代生活のための衣服」をブランドのコンセプトにしていますが、現代生活そのものの定義はブランド側で決めてはいません。いま僕たちは大きな変化のなかにいることを服作りをするなかで強く感じます。だから現代生活の定義も、いろいろな人々との対話や体験を通して日々アップデートしていくべき概念だと思っています。

かつて衣服の影響力は、現代よりも大きなものでした。身にまとうことで強くなれたり、気持ちを高めたり、そのような作用が顕著にありました。自分という存在を表現する一番のツールだったのです。しかし今の時代、自分の表現に必要なのは衣服だけではありません。SNSによって、旅行の風景や美味しい食事、友人関係などさまざまな要素が自分を構成しているのだと示せるようになったと同時に、ライフスタイル全体で表現する必要が出てきました。衣服だけを切り取って考える人は少なくなっているでしょう。

昨年ブランドを設立してから、多くの人に「ブランドのミューズは?」と聞かれましたが、CFCLには固定されたミューズはいません。しかし、ペルソナはいます。それは変化し続ける時代のなかで、自分が何者なのかを問い続け、ポジティブに行動している人々です。

このプロジェクトでは、そんなCFCLのペルソナと考えている一人ひとりにお声がけをし、蓮井幹生さんにポートレート撮影をしてもらうことにしました。CFCLの衣服をまとってはいますが、撮っているのは服ではなく、その人です。プロのモデルが衣服のためにポーズをとるのではなく、今をいきいきと生きる人たちに着てもらい、その姿を彼らの言葉とともに残したいと思いました。

蓮井さんの提案で、このプロジェクトでは11×14という規格のカメラで撮影しています。コンピューターでレタッチもできませんから、ありのままの姿が残ります。20世紀初頭から中期まで活躍した大判フィルムは、小型カメラやデジタルカメラの出現によって、記録を残すというもともとの役目を終えました。しかし大判フィルムにしか表せない、写真そのモノの強さは今なお存在します。このプロジェクトは、古いカメラで今を生きる人を残すという、タイムレスな企画です。今年見ても50年後に見ても、違和感がないような写真を残したいと考えています。

強く見せるための服が甲冑だとすれば、CFCLが目指すのは薄皮のような服です。内から湧き出る力がある人に、強がるための服はいりません。彼ら一人ひとりが現代生活を送るための手助けになる服を、CFCLは目指しています。