CFCLでは、2020年設立当初から、衣服の機能性の追求と同時に環境保全への試み、最適な国産素材の選択、サプライチェーンの透明性を事業の根幹に置き、服づくりを通じた活動の中で、いま私たちにできる取り組みを続けています。
2021年1月に発売したファーストコレクションVOL.1から1年が経ち、今回のCONSCIOUSNESS VOL.3 REPORTでは、VOL.1やVOL.2以降の活動の進捗報告や今後のアプローチを含め、内容量をより広く詳細にみなさまに開示して、成長の機会につなげて参ります。
VOL.3を通して行った活動と結果は、以下の4項目です。
1. LCA(ライフサイクルアセスメント)において、対象商品の範囲を広げ、POTTERYシリーズに加え、POTTERY KIDS、FLUTED、LATTICEシリーズを含め全17型へと拡大し全体の38%を算出しました。生産過程から最終廃棄過程において、「どのようにアプローチすればカーボンニュートラルを達成できるか?」、その道筋を検証しています。
2. 地球環境や基本的人権への責任が認証された素材の使用率が8.22%向上し66.34%となりました。(VOL.1比較)
3. VOL.2で行ったSDGs Performance Guidelineのアンケートをもとに、東北、北陸、関東の生産工場各社を訪問し、SDGsに関する課題について話し合い、どのように解決していけるか、協議を開始いたしました。今回のレポートでは、POTTERYシリーズをVOL.1から生産いただいている工場での成果事例を併せてご報告します。
4. シーズンアイテムの残り糸をアップサイクルしたプロダクトをご紹介します。
日本における温室効果ガス排出の「実質ゼロ」達成目標時期は、世界先進各国と同様に2050年です。日本は、2030年までに中間目標として2013年度よりも排出量を46%削減する必要があります。これは、我々の生活のいろいろな消費行動や、企業のいろいろな生産活動の細かい部分までを、根本から考え直さないと達成することが難しい目標です。
この目標へのアプローチとして、CFCLでは、VOL.1より継続してLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施しています。
VOL.3でのLCA:
このビジュアルは、「POTTERY 全6型」「POTTERY KIDS 全4型」「FLUTED 2型」「LATTICE 3型」の温室効果ガス排出量一覧です。VOL.3では、CFCLを象徴する壺のような丸みのシルエットを持つPOTTERYシリーズや、縦溝のラインが特徴のFLUTEDシリーズの他、春夏らしい透け感のあるLATTICEシリーズなどが商品ラインナップに加わり、商品数も大幅に拡大しています。各シリーズにおける、PETボトル回収、再生糸の製造、糸の加工や染色、ニッティング、縫製・仕上げ、お客さまによるご使用(ご自宅での洗濯)を経て、役目を終えて廃棄されるまで(焼却と仮定)の全プロセスで「どの程度の温暖化影響があるか(温室効果ガス排出)」の検証を、関係する日本国内のサプライヤー様7社のご協力を得て実施いたしました。VOL.1からの1年間で、全45型のうち17型(約38%)の排出量が把握(*1)されたことになり、2025年までの出来るだけ早い時期に、発表する商品100%において公表することを目指して取り組んでいきます。
※1着あたりに使用しているおよそのPETボトル本数
プロダクト別の検証:
これまでの1年間、取り組んできて分かったことは、「いまの工場各社での生産のあり方や、我々が選んだ素材、お客さまでの使用~廃棄のあり方であれば、どのくらいの温室効果ガスを排出するのか(例: POTTERY DRESSの半袖は4.99 kg-CO2e)」ということです。
しかし、このLCAを実施し、公表することの真の目的は、この「排出」をいかに減らしていけるか(温暖化の危機をいかに回避して次世代に責任を果たせるか)、その道筋を考え、実践することにあります。
そのため、今回のレポートでは、それぞれの衣服ごとに、どのような場面(工程)で、どれほど排出しているか、及び削減していけるか、といった検証について詳しくご紹介したいと思います。その検証結果が下記の表1となります。
VOL.3で初登場した「LATTICEのロングコート」が最も温室効果ガス排出量の多い一方、POTTERY KIDSは「最少」の数値となりました。要因はいくつかありますが、以下3点の組み合わせによる結果を挙げることができます。
1.「糸の使用量」の多さ
2.「無縫製ニット」かどうか
3.「ニットデザイン」の複雑さ
凹凸のある表情豊かなデザインのFLUTEDやLATTICEシリーズは、複数の縫製やアイロン仕上げが必要となるため、POTTERYシリーズに比べると温室効果ガスの排出量が多くなります。CFCLでは、衣服のロゴを最少に、素材選定や衣服の構造の組み合わせなどは極力シンプルにするなど、ミニマルなデザイン・生産をしておりますが、「ロングコート」はLCAを実施した商品の中でサイズが最大かつ最長であるため糸の使用量も多く、排出量が多くなりました。
CFCLにとって、これらのシリーズは創造的なチャレンジを続けていく上でも重要なアイテムであるため、生産中止、と極論づけずに、排出量を減らしながら極力1本の糸で完結させられる衣服として、あらゆる進化を目指していきたいと考えています。そのため、「表情豊かで繊細・緻密なニットデザイン」を実現させつつ、温暖化への負荷をゼロに近づけていくために何を、どのような道筋で改善していくべきか、5つの施策を立案しました。
以下の表2は、先ほどのグラフを別の視点から捉えた分析となります。
■施策1:ニッティング工場各社での再生可能エネルギーへのシフトを促進する
■施策2:ニッティング設備などの省エネ設計を促進する
「商品製造」プロセスにあたる「ニッティングや縫製・仕上げ」などのプロセスにおいて、温室効果ガス排出量の比率がその他の工程に比べて全体的に高いことがわかります。ニットブランドであるCFCLは、この工程について日本国内のニット工場各社と連携し、再生可能エネルギーへの切り替えや、設備機器の省エネ設計の可能性など、持続可能性を追求する上での取り組みを進めていきます。(この後の「SDGs Performance Guideline と生産工場での取り組み・改善の実施」にて具体的改善例を詳述します)
■施策3:原料を更に環境負荷低減型へシフトする
■施策4:原料工場各社での再生可能エネルギーへのシフトを促進する
次に、「原料調達」のプロセス、つまりPETボトルの回収~再生原料の生産~紡糸、のプロセスにおいて温室効果ガス排出量の比率が、「商品製造」プロセスに次いで高いことがわかりました。CFCLは既にVOL.3で全体の約7割に再生原料(再生ポリエステルや再生コットン等)を選択し使用しています。これにより、新たに石油採掘して調達するヴァージンポリエステルやオーガニックでないコットンに比べて50%程度の温室効果ガス削減を達成(*2,*3)していますが、今後、原料メーカー各社様とも協議を重ね、調達地や原料製造プロセスを工夫したり、太陽光・風力を中心とした再生可能エネルギーにシフトいただくことで、カーボンニュートラルの達成を目指します。
■施策5:廃棄を回避する
「生活者の方が、使用後に商品を廃棄し、焼却場に運ばれて最終処分される」、このプロセスで発生する温室効果ガスの量が、「商品製造」「原料調達」に次いで多い傾向にあります。CFCLでは、毎シーズンでトレンドを大きく変えずに長くご愛用いただけるよう、短期的には、いかに廃棄を生まないデザインや品質、リペア対応ができるか、また、長期的には、廃棄衣服から糸に再生する「ケミカルリサイクル」が将来できるよう統一素材でのものづくりを推進するなど、短期と長期の双方で、具体的な課題に尽力しており、また、お客さまからの声も日々参考にしております。
CFCLは、このような全ての要素を更新しながら、2025年までに全型をLCA対象範囲とすることを目標とし、脱炭素や、ミニマムウェイスト(最少廃棄)を日々実践し、2030年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする=カーボンニュートラルや、SDGsに代表される社会課題の解決を目指しています。
*1 IDEAv2.3を使用して算定(LCIデータベースIDEA version2.3, 国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門社会とLCA研究グループ, 一般社団法人サステナブル経営推進機構)
*2 自社調べ
*3 「衣類を対象にしたCO2及び水のインベントリ分析」東京都市大学 環境情
報学部 環境情報学科 伊坪徳宏研究室
「66.34%」
VOL.3コレクションの、地球環境や基本的人権への責任が認証された生産原料の使用率は「66.34%」です(表3)。同じ春夏シーズンであるVOL.1と比較すると、およそ8.22%、向上させることができました。
CFCLが進める原料や素材の選定には幾つかの要素があります。主には、その中核を占める素材が「再生素材であること」、「原料段階まで遡り、その生産現場の人権が守られていること」が挙げられます。素材であれ商品であれ、それが新開発素材やバイオマス素材であれ、「使ったら廃棄」という「一方通行の流れ」は、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出に直結するため、再生されることが重要、と考えるからです。
廃棄を回避して再生を促す、これが全産業で徹底されていけば「循環型社会」の形成につながっていきますが、再生素材という言葉が珍しくなくなった今でも、世界のアパレル業界を見渡すと、再生素材が使われる割合は微々たるもので、新たに地球資源を採掘、伐採、採取して使うヴァージン素材に比べてわずか5%にも満たない、という調査結果があります。(参照: Ellen MacArthur Foundation. A New Textiles Economy)
CFCLでは、3R(Reuse, Reduce, Recycle)に代表されるRecycleを徹底する事で、新たな地球資源の利用を削減(reduce)すべく、再生素材を積極的に使用しています。商品数が増え使用する糸の量が増えている現在でも、再生素材の使用率を上げていくことで資源の保全を促進いたします。
これら取り組みの結果、VOL.1に比べ、再生素材使用がどれほど増えたかについて、以下の表4で確認することができます。
*コットン自体の使用は全体的に2%程度と少量ですが、使用するコッ トンの90%において、OCS認証を取得しています。
*CFCL商品にしめる割合が小さいため、上記集計にはボタン、ファスナー、紐、ウェストゴムなどの付属素材は含まれておりません。
SDGs Performance Guideline:
SDGsを取り巻く問題を解決する上で、CFCLのみならず、その価値を生み出すバリューチェーン全体で取り組む方が、より広範囲で早急なインパクトを生んでいけるという考えに立ち、2021年8月には、新たな取り組みとしてSDGs Performance Guidelineのアンケートを実施しました。サプライヤー13社へSDGsにおける活動の実践状況を確認し、その試みをCONSCIOUSNESS REPORT VOL.2にて一部公表しています。
その後、生産現場に順次赴き、各社からの回答内容の相互確認や改善対応を開始しました。 その中で、VOL.1からのPOTTERYシリーズ生産工場(関東圏)での経営改善につき、どのようなガイドラインの設問において、どのような対応がされたか、ご紹介させていただきます。
設問: 自社の主力商品・あるいはサービスは、会社全体における廃棄量を削減しており、年間合計数値と共に実証できますか?
対応: ニッティングにおけるオペレーションを改善することにより、VOL.1でのロス率*「7~9%」から、VOL.3では「4~5%」へ削減。不具合品の発生を含む「生産ロス」による糸の廃棄量を削減している。(表5)
「3倍」: PETボトルを焼却廃棄(熱回収)などとせず、糸として再生使用した量
「42,167本」:再生糸として使用した量のPETボトル換算数 (VOL.1は14,482本分)
「半減」:生産プロセスにおける不具合により廃棄せざるをえない材料のロス率
トレンドを大きく左右させないPOTTERYシリーズをデザインし続けることが、上記のように、生産パートナーでの作業効率・生産精度・ 製造効率を高め、結果としてロス率の削減にもつながります。
(*ロス率:デザイン通りのニッティングができずに衣服の生産途中でストップせざるを得ず、不良品や不要部分が発生する比率のこと。また、その結果発生する糸などの廃棄素材の比率のこと。)
設問: 自社の主力商品・あるいはサービスは、地球資源の新たな使用を削減することに貢献しており、それを年間での貢献数値と共に実証できますか?
対応: 2020年のCFCLの商品生産開始以前からの工場や設備の電気などエネルギーを、2022年1月から再生可能エネルギーに切り替え、石炭や天然ガスなど新たな地球資源の使用を削減している。
・これまで:石炭やガスなど約80%が火力発電によるエネルギー
・2022年1月~:太陽光・風力を中心とした「再生可能エネルギー100%」→ 温暖化影響ゼロ
これにより、今夏以降発売予定のVOL.4からは、CFCLのPOTTERYシリーズの全商品において、温暖化ガスの排出量が最大30%削減されます。(表6: 表2から抜粋し、POTTERYシリーズをハイライト)
今後のSDGs Performance Guideline:
今後のパフォーマンスガイドラインの取り組みとして、生産工場に限らず、CFCLが直接的・間接的に関係するサプライヤーやパートナーなど様々なステークホルダーにどのように貢献していけるかを各社と共に検討していきます。
私たちが考えるステークホルダー(自社の利害関係者であり恩恵主)は4つに大別されます:
1. 地球環境
2. 自社、サプライチェーン、パートナー各社が活動する地域社会
3. 自社社員
4. 顧客・消費者
私たちの活動において、金銭的、財務的な利益(プロフィット)を得ていくことと同様に、恩恵(ベネフィット)を生み出せるのはどのような場所、人、あるいは問題・課題なのか、どうやって成果を確認していくのが適切なのかを、CFCLだけで定義するのは難しいことですが、ヒントとなるのが2点目の「地域社会」(ローカルコミュニティ)です。自社の社員もまた、その出身地などを通して、地域社会やコミュニティと繋がっています。
対話していくなかで、以下のような問いが重要となってきます。
①「御社にとっての地域社会 (ローカルコミュニティ)とは具体的に何か?」
②「CFCLとの取引が拡大して行ったとき、御社のみならずそのコミュニティにもベネフィットをもたらせるとすれば、それは具体的にどのような場面、人、問題・課題か?」
③「売上や利益などの金銭的な実績と並んで、事業の成果として長期的にチェックしていくべき指標は何か?」
これらの問いは、特にビジネスの中核としては過去にない問いではありますが、SDGsの実現を見据え、地方や業界などのコミュニティについて、自身の経営タスクとして、(社員)一人ひとり各自が取り組んでいく上で、欠かせない問いとなります。
各社と協議しながら、このCONSCIOUSNESSレポートを通して皆さまと、これらステークホルダーとの取り組みの成果を共有していければと思っております。
CFCL VOL.3 Collection – UPCYCLED POTTERY SKIRT
壺の様な丸みのあるシルエットが特徴的な、CFCLを象徴するPOTTERYシリーズのアップサイクルアイテム。
量産での色ブレを最小限にするためにわずかに残していた糸を無駄にしないように、アップサイクルした糸を使用しています。VOL.3では、UPCYCLED POTTERY SKIRTとしてカラフルな9色展開で発売しました。