
CFCLは創設当初より2030年のカーボンニュートラル達成を見据え、2025年までに全品番におけるLCA算出の達成を一つの目標として掲げてきました。ファーストシーズンに1品番のドレスから始まったLCAの算出は、シーズンを重ねるごとに対象を広げ、VOL.10では238品番へと拡大しました。これは香水、お香、サングラスを除く、CFCLが取り扱う衣服とアクセサリーの全品番となります。
また本レポートより社内横断で「Consciousness」に関わる活動を推進する体制へと移行しました。創業期には1名で始まり、VOL.6以降は3〜4名で担ってきた活動を、今季からは企画・生産・物流・営業・店舗など各部門の日常業務に組み込み、組織全体で責任を分担する形へと発展させています。製造工程の細部まで目を配る生産管理や、お客様の声を受け取る店舗スタッフなど、それぞれの現場の知見が直接取り組みに反映されることで、各領域における検証の精度がより高まることを期待しています。今後もこの体制を基盤とし、事業成長と環境負荷低減の両立を着実に前進させていきます。
VOL.10では、以下3つの領域に焦点を当て、具体的な検証と評価を行いました。
1. 素材の調達
認証素材の使用率と、生産者の労働環境・環境負荷に配慮した素材選定の検証
2. LCA (ライフサイクルアセスメント)
・ラメ糸を使用した製品のLCA検証
・モヘヤを使用した製品のLCA検証
・原着糸を使用した製品のLCA検証
3. クローズドループの実現に向けて
二次流通サービス「Next Loop」の運用開始と、消費者意識調査の結果
地球環境および生産者の労働環境への責任の履行が認証された素材の使用比率
図1 VOL.10コレクションで使用された素材の使用比率(*1)

*今回の集計にボタン、ファスナー、紐、ウエストゴムなどの付属資材は含まれておりません。
(原材料に占める付属の割合が少ないため)
VOL.10では、生産に使用された主要素材の87.8%が、地球環境と基本的人権への配慮について第三者機関による認証を受けています。これはVOL.8から6.4ポイントの増加となり、秋冬シーズンとしては過去最高の認証素材使用比率を達成しました。CFCLの継続的な認証素材の採用が着実に広がっていることを、数字の推移が示しています。比率向上には、GRS認証の再生ポリエステルの使用拡大が大きく寄与しており、VOL.10における素材全体の約80%を占めています。
今シーズン、CFCLは10回目のコレクション発表という節目を迎え、クリエイションの原点を見つめ直しました。素材においても、これまでバリエーションを広げてきましたが、改めて再生ポリエステルを中心としたクリエイションに向き合ったことが使用率の拡大に反映されています。その他、キュプラ(RCS*1)、コットンインコンバージョン(OCS*2)、オーガニックコットン(GOTS*3)などの認証素材も継続的に使用しています。VOL.8のレポートで課題に上げたウールやモヘヤについて、一部をRWS*5とRMS*6の認証素材に切り替えましたが、未認証素材の残り12.1%を構成するウール、ヴァージンポリエステル、ヴァージンナイロンなどの素材調達においては、引き続き課題が残っています。
完全なトレーサビリティの実現に向けて、VOL.12からはウールにおいてノンミュールシング糸の導入を計画しており、動物福祉と環境への配慮をさらに強化する予定です。このような継続的な取り組みを積み重ねながら、CFCLは2030年までに認証素材使用比率100%の達成を目指しています。あわせて、サプライチェーンのトレーサビリティを高めながら、ブランドの根幹にある洗練性と倫理性の双方を大切にした素材選択を、今後も追求していきます。
図2 秋冬シーズンにおける認証素材の使用比率の推移


VOL.10コレクションにおいて、CFCLは香水、お香、サングラスを除く、衣服とアクセサリーの全製品のLCA (ライフサイクルアセスメント)算出を達成しました。創業時から続けてきた取り組みが、ひとつの大きな節目を迎えたシーズンとなります。
私たちの事業活動に伴う温暖化ガス排出の約60%*4は服づくりの製造プロセスに起因しています。そのため、製品製造における環境負荷の正確な把握が、私たちの最も重要な責務であると考え、ファーストコレクションから製品単位でのLCA算出に着手しました。毎シーズン、糸製造のサプライヤーや素材加工工場、製品製造工場からのヒアリングを重ね、工程ごとにLCA算出に必要な活動量 (エネルギー使用量、稼働時間、原料量など) を収集・積み上げるという地道な作業を継続してきました。
VOL.11からは2030年のカーボンニュートラル達成という目標に向けて、測定のみならず「削減」のフェーズへと歩みはじめます。その第一歩として、事業活動全体の排出量の割合を整理し、解像度を高めながら、削減計画の立案を開始しています。
今回のレポートでは以下3つの具体的な取り組みを紹介します。
Ⅰ. ラメ糸を使用した製品の算出
Ⅱ. モヘヤを使用した製品の算出
Ⅲ. 原着糸を使用した製品の算出
Ⅰ. ラメ糸を使用した製品の算出

ラメ糸はCFCLの製品において、表現と機能の両面を支える重要な素材です。表現の側面ではカジュアルな概念を持つニットにオケージョンにも応える華やかさを、機能面ではストレッチ性のあるニットに構築的な張り感を与えるために継続的に採用してきました。
VOL.2から使用しているラメ糸 (素材1) は、金属蒸着した再生ポリエステルの芯糸を同素材の糸でカバーリングする構造により、デザイン性と環境配慮の両立を図っています。パリ・ファッションウィークの公式ランウェイスケジュールでの参加となったVOL.8からは、表現の可能性を探る試みとして、リサイクル素材では追求できない、より表情が豊かなラメ糸まで選択肢を広げ、VOL.10では3種類のラメ糸を使用しています。(素材2、3)

また、ラメ糸の張り感に着目した編み地の開発も進めてきました。VOL.7のレポート(こちら)のとおり、これまでHYPHAシリーズでは立体的なフォルムのために撥水加工糸を使用してきましたが、開発を通じて、素材3を編み地に採用することで、撥水加工糸に頼ることなく張り感を生み出せるようになりました。
素材選びの変遷

素材2、3において、現時点では主にヴァージンフィルムを使用したポリエステルやナイロンを使用しています。硬い質感のヴァージンフィルムに比べ、リサイクルフィルムは張り感が出にくく柔らかくなりやすい特性があり、あまり一般的に流通していません。
私たちはこれらのヴァージン素材を継続的に採用し、サプライヤーと課題を共有しながら、リサイクル化に向けた対話を重ねています。開発現場では一定の需要がなければ量産開発が進みにくいという現実がありますが、コスト・品質面の課題も踏まえ、必要性能を満たす配合や設計条件を検証しながら、実装可能な領域から段階的にリサイクル比率を高めていきたいと考えています。
ラメ糸を使用した製品の温暖化ガス排出量は以下のとおりです。

Ⅱ.モヘヤを使用した製品の算出

今シーズンのコレクションでも、モヘヤ素材は重要な役割を担っています。光沢があり、軽く、自然な弾力性を持つモヘヤは、南アフリカのカルーで育てられたアンゴラ山羊の毛から採られています。過酷でありながら自然環境に恵まれた気候のもとで育つ山羊から得られるモヘヤは、世界の天然繊維の中でもわずか0.05%未満 (*7) という希少な素材です。原毛は倫理的に運営される農場から調達され現地で適切に処理されたのち、海外で紡績され、日本国内にて染色が施されています。それら工程を経て、滑らかで上質な風合いと耐久性が生まれ、最終的にコレクションに採用されるに至ります。
VOL.8レポート(こちら)のとおりこれまでは、原料調達や輸送に関する情報が限られていたため、LCA算定には主にデータベース上の二次データを用いていました。VOL.10では調達先や紡績地などの情報が以前より明確になったことで、実際のサプライチェーンに近い輸送距離や条件での算定が可能になりました。その結果、VOL.10におけるLCAの数値はVOL.8と比べてわずかに増加しましたが、これは環境負荷の悪化を意味するものではなく、データの精度が高まり、より実態に近い数値を把握できるようになったことを示しています。算出結果は以下の通りです。(図3)
図3:モヘヤを使用した衣類のLCA計算

VOL.8で課題となっていた原料調達の透明性を高めるため、今シーズンは原料調達段階でRWSおよびRMS認証を取得した素材へ切り替えました。これは、サプライチェーン上流の実態をより確かに捉えるうえで大きな前進であり、責任ある素材選定を進める取り組みとしても重要な一歩です。また、原料調達先が明確になったことで、輸送距離を含む計算条件を実態に近づけられ、LCAの算定精度も向上しています。
一方で、サプライチェーン全体で認証の取得が十分に広がっているとはいえず、現時点では透明性を確保できる水準にまだ達していません。各工程における一次データ取得も依然として難しく、原料調達段階の改善だけではサプライチェーン全体の透明性向上には結びつきにくいという課題が残ります。アパレル業界に特有の分業構造と多段階の工程から、サプライチェーン全体で情報を取得し、認証を広げていくには、まだ時間を要します。(図4)
図4:モヘヤにおけるサプライチェーンの工程(原料調達部分のみ認証)

それでも今回の切り替えは、素材調達における透明性を高めるための確かな積み重ねであり、今後の改善につながる重要なステップです。私たちは引き続き、サプライヤーとの対話を重ねながら、より透明性の高い素材の選定と一次データの取得を進め、責任ある情報開示に努めていきます。
Ⅲ. 原着糸を使用した製品の算出

STRATAシリーズは、ピンタックとリブを組み合わせた編み地が特徴のサコッシュやトートバッグなどのアクセサリーを展開し、VOL.3より継続しています。製品には熱を用いた二次加工が含まれるため、それに耐えうる品質の安定が求められてきました。こうした背景から、加工後の再現性を確保しやすい原着糸が適していると判断し、VOL.8より従来の後染め糸から原着糸への切り替えを進めています。
原着糸は樹脂段階で顔料を練り込んで成形されるため、一般的な「後染め」のような工程を必要としません。過去に算出した後染めヴァージンポリエステル糸では、1kgあたり約10Lの水を使用していましたが、原着糸は染色工程が存在しないため水使用量はほぼゼロとなります。
同条件 (1kgあたりの必要糸量換算) で温暖化ガス排出量の比較をしたところ、原着糸は、後染め糸と比べてわずかに低い、もしくは同等という結果が得られました。原着糸は種類や加工工程、使用する機械によって環境負荷に一定の幅が生じるものの、温暖化ガス排出量については後染め糸と大きな差はみられませんでした。
原着糸は工業分野での使用が多く、色や仕様のバリエーションが限られています。そのためSTRATAシリーズではヴァージン原着糸とリサイクル原着糸を併用し、コレクションにおける設計の幅と表現力を確保しています。これは制約による妥協ではなく、デザイン上の要件を満たしつつ、発色や構造を損なわずに生産するための意図的な判断です。
今回、原着糸を使用した製品の温暖化ガス排出量は以下のとおりです。

総合的に見ると、水使用量の削減という観点では原着糸全般が、そして温暖化ガス排出量の削減という観点ではリサイクル原着糸が優位であることが分ります。これらの特性を踏まえて、STRATAシリーズにおける原着糸の採用は環境負荷低減に寄与する素材選択であると考えています。
再生ポリエステル原着糸(左)とヴァージンポリエステル原着糸(右)の排出量比較

より持続可能な素材調達を実現するためには、原着糸の活用に加えて、トレーサビリティや環境配慮が担保された認証素材の採用を拡大していくことも重要です。今後はヴァージン原着糸への依存を段階的に抑え、リサイクル素材や認証素材への移行を中期的な目標として進めていきます。引き続き原料サプライヤーとの対話を重ね、環境性とクリエイションの両立を探りながら、より持続可能な素材選択を追求していきます。
CFCLは、ポストコンシューマー段階における循環の実現に向け、独自の二次流通サービス「Next Loop」を開始しました。商品の販売までをブランドの責任範囲と位置付けていましたが、お客様の手元に渡ったあとの「出口」まで責任を持つことが次のスタンダードであるという考えから生まれた取り組みです。(Next Loop特設ページ:こちら)
「Next Loop」は、着用されなくなったCFCLの衣服をブランド自ら回収・修復して再流通させ、クローズドループの実現を目指す取り組みです。協業パートナーにはブランド古着を扱う「RAGTAG」を迎え、2025年5月より回収を開始しました。さらに、ニュウマン高輪でのポップアップ「CFCL NEXT LOOP」を皮切りに、修復したニットウエアの販売をスタート。会期終了後は、新店舗「CFCL TAKANAWA」にて、現行シーズンのコレクションとともに二次流通商品を継続的に取り扱っています。
2025年5月の開始から、回収できた枚数は以下の通りです。
■ 回収実績(2025年5月〜9月)
・総回収枚数 :265枚 (買取211枚 / 無償54枚)
・販売不可枚数 :7枚 (総回収比2.6%)
回収した衣服は、CFCLにて一点ずつ状態を確認し、必要なメンテナンスを行ったうえで、当社が定める販売基準を満たすもののみを買取および再販の対象としています。修復を行ったものの、最終的に再販に適さないと判断した衣服についても、廃棄は行わず保管しています。また、回収時点でダメージが大きく修復が困難な衣服は買取の対象外となりますが、店頭にて無償回収を行っています
これらの衣服は、将来的に原料へと再生し新たな製品として再び循環させる仕組みの構築を進めています。こうした取り組みを通じ、回収したすべての衣服の行き先に責任を持った、完全なクローズドループの実現を目指しています。
二次流通商品の販売開始にともなうポップアップ「CFCL NEXT LOOP」(2025年9月12日 – 10月12日)では、162点の売上が成立しました。また来場されたお客様の行動やニーズをより深く理解するため、会期中に二次流通に関する意識調査(N=49)を実施したところ、次のステップにつながるいくつかの示唆が得られました。
調査では、Next Loop 商品の購入理由や着なくなった衣服の最終処理に関する意識など、二次流通に対するお客様の行動と価値観を把握することができました。
主要な傾向を以下の図にて示しています。
1. Next Loopを購入いただいた理由 (複数回答可)
最も多かったのは価格の手頃さ (67.3%) 、次いでデザイン・見た目 (65.3%) が特に重視されていました。また、商品の状態の良さ (46.9%) やサステナビリティへの取り組み (34.7%) も一定の支持を得ており、品質への安心感、そして環境配慮への共感が、お客様の購入理由に結びついていることがうかがえます。

2. 着なくなった衣類の最終処理 (複数回答可)
「リユース/リサイクル」と「譲渡」を合わせると、延べ回答割合としては約83%と多くを占めましたが、「廃棄する」と回答した人も約45%にのぼりました。循環への関心が高まる一方で、実際の行動では廃棄を選ぶケースも一定数存在し、意識と行動のあいだにギャップが生じていると考えられます。

3. 二次流通商品の購入頻度
二次流通商品の購入は「年に数回程度」が最も多く全体の半数以上を占めています。「今回が初めて」という未経験層も36%あり、Next Loopの取り組みが、これまでリユース品に手を出せなかった潜在層の最初のトライアルとして機能したと推測できます。

4. 二次流通商品の購入にあたって気になる点(複数回答可)
最も気になる点は「商品の状態」で、約76%が重視しているポイントでした。 次いで「衛生面」が多く、さらに「サイズが合うか」といった点も一定の割合を占めており、品質と実用性が大きな判断基準となっています。 一方で「返品・交換ができない」「本物かどうか」といった不安も一定数存在することから、「安心して使えるか」への高い関心が見受けられます。

本調査を通じて、二次流通においては「価格やデザイン」といった実用面に加え、「信頼できる品質」が購入の判断基準として欠かせない点であることが確認されました。また、資源循環への関心を行動に移しきれていない層が一定数存在する状況は、今後の循環型サービスのあり方を考えるうえで重要な示唆となります。さらに、この層に対しては、ブランド公式の取り組みが有効な選択肢となり得ることも明らかになりました。
今回の調査結果を踏まえ、CFCLでは、回収製品を原料へ再生する仕組みの整備を進めるとともに、品質基準や循環サイクルの運用をさらに強化していきます。二次流通をより身近で信頼できる選択肢として確立し、継続的な廃棄物削減と資源循環の推進につなげていくことを目指します。ものづくりの価値を未来へつないでいくため、製品がお客様の手に渡ったあとの「使用後の責任」にも誠実に向き合い続けます。
*1 RCS (リサイクル・クレーム・スタンダード) は、最終製品に含まれる原材料に5%以上の再生材料を含んでいるかどうかを審査する国際認証です。
*2 OCS (Organic Content Standard) 認証は、製品に含まれるオーガニック素材の含有量を第三者が検証する国際基準です。原材料から最終製品までのオーガニック素材の追跡可能性を保証し、信頼性を提供します。
*3 GOTS (グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード) は代表的な国際基準策定機関によって、原料の収穫から社会的に責任のある製造を経て、消費者に信頼できる保証を与えるラベリングに到るまで、「繊維製品が正しくオーガニックである」という状況を確保する世界的なルールを定めるために開発された国際的な世界基準です。
*4 本数値は、2022年9月から2023年8月までの期間におけるCFCLの事業活動全体に伴う温室効果ガス排出量 2,602.79 tCO₂e をもとに算出しています。そのうち、原材料調達、糸製造、素材加工、製品製造工程など、衣服づくりに関わる排出量は 1,555 tCO₂e であり、全体の約 60% に相当します。
*5 RWS (Responsible Wool Standard認証 ):ファッション、繊維、アパレル業界全体で気候変動に対する前向きな行動を推進する世界的な非営利団体Textile Exchangeによる国際的な自主基準であり、認証農場から最終製品までの羊毛の追跡管理 (チェーン・オブ・カストディ) を定めた国際的な任意規格。
*6 RMS (Responsible Mohair Standard認証):RWS認証同様、非営利団体Textile Exchangeによる、国際的な自主基準であり、認証農場から最終製品までのアンゴラ山羊の追跡管理 (チェーン・オブ・カストディ) を定めた国際的な任意規格。
*7 Textile exchange (Reference)
WHISTLE BLOWING
CFCLの取締役・役員・社員で、CFCLのポリシーに違反すると思われる発見または法律に抵触すると思われる発見をした場合は、以下の問い合わせ窓口にいつでも連絡することができます。
問い合わせ窓口:小松隼也 弁護士 (三村小松法律事務所)
email:komatsu.junya@mktlaw.jp
CFCLの最新ポリシーはこちらに記載をしております。













